恐れながらも、結局はCATツールを使ってみて

私はデジタルネイティブ世代ではありませんが、新形態のテクノロジーに常にオープンでいますので、CATツール(コンピュータ支援翻訳ツール)に対する翻訳者からの疑念や懸念の声を聞くたびに驚かされます。

しかし、昨年11月にブリスベンで開催されたAUSITのカンファレンスにてアンゲリカ・ザーファスさんが「翻訳ツール-敵か味方か(それともそれ以外?)」(Translation Tools – Friend or Foe (or something else?)の公演を行った際、オーディエンスからの最も多かった反応のうちの一つはまさにそれで、機械に仕事を奪われる可能性、過度なテクノロジー依存による翻訳スキルの低下、従来の一文字あたりでの翻訳レートよりも低コストなマッチ率で支払い、翻訳者から搾取するエージェンシー、といった翻訳者からの懸念の声が上がりました。

未知なるものに恐怖を抱くのは自然なことかもしれませんが、私の考えは違います。3部構成シリーズのパート1では、なぜCATツールを恐れるべきでなく、余計な手間を省いた能率的な翻訳のために有効活用すべきなのかをご紹介します。

懸念材料その1 - CATツールに私の仕事を奪われる

テクノロジーが人間から仕事を奪い取ってしまうのでは、と考えるのは不思議なことではありません。しかし、CATツールが恐るべきものである必要はありません。

まず初めに理解すべきなのは、機械翻訳、「MT(Machine Translation)」とコンピュータ支援翻訳ツール、「CAT(Computer Assisted Translation)」は大きく違うということです。機械翻訳は、グーグルにフレーズをコピペし「翻訳」ボタンをクリック するといった感じです。翻訳マシンはその言葉をデータベースにかけ、訳を吐き出します。訳文は通常逐語的に訳され、たいていの場合意味がちんぷんかんぷんです。これは日本語と英語といったSTとTTの文法がかけ離れている場合、特に顕著になります。もちろん、車の部品リストなどといった翻訳データに機械翻訳を活用することもできますが、しかし精妙さが求められる適法契約やマーケティング資料のような文書の場合は、本物の猫に翻訳を任せた方が賢明でしょう。

一方のCATツールは、その名の通り翻訳者を「支援」するツールです。これらのツールは同じ文章を二度も訳さずに済むよう、翻訳する文書を分類するといった日常的な作業の手助けをしてくれます。しかし、MemoQ、WordFastそしてSDL Tradosのようなアプリケーションが文章を読み、ニュアンスを読み取り、目的言語に書き直すというユニークな能力を持った人間の翻訳者の必要性に取って代わることは決してありません。

CATを人間への脅威で強欲な翻訳会社による邪悪な制限と見るよりも、正しく用いればこのテクノロジーは翻訳者の時間を節約してくれる便利なツールだと考えたほうがより有益なのではないでしょうか。文章とグロッサリーを照らし合わせるといった退屈で繰り返しの多い作業数を減らすことにより、CATは実際に楽しんでできる翻訳作業に集中させてくれるのです!

アプリケーションソフトウェアのWordは文書作成に革命を起こし、タイプライターでの活字起こしを「文書処理」に変えました。しかし、プロのライターやジャーナリストがより早く情報提供してくれるように、Wordがあなたをより上手な物書きにしてくれるということはありません。もちろん、自動で綴りや文法のチェックはしてくれますが、スペル・チェッカーが出した候補の半分は間違っています。だからこそ「無視する」ボタンがあるのです。

CATツールも同様に、よりよい翻訳者にはしてくれはしません。もし翻訳メモリのデータベースにがらくたを入力するのならば、それが違う言語にそのまま反映されることになります。 しかし編集様式、表、見出しに手を加えることで、Wordで早く書式を整えられるように、CATツールも過去に翻訳したことのある文章を自動的に検索や差し替え、さらに投入する手助けをしてくれます。素早く情報を統合し、箇条書き部分を整える、書式を貼り付ける、表の書式設定をするといったことに費やす時間をなくすことができます。 中にはそのような骨の折れる仕事が楽しいと感じる人もいるでしょうがもうやめて、私は翻訳の楽園にいます。

選択肢があるならば、Wordを使わずメモ帳のような右端で折り返す、検索、置換しかできない必要最低限なアプリケーションに原点回帰しますか?しませんよね。一度直にCATツールのメリットを感じられたら、なぜこんなに長い間Word、Power Point、Excelといった翻訳の国の「メモ帳」に留まっていたのだろうと疑問に思うことでしょう。

テクノロジーは今後も私達のコミュニケーション方法や働き方を変化し続け、いつの時代も新しいテクノロジーをコスト削減や一般市民を押しのけるために悪用する会社や人々は常に存在し続けるでしょう。しかし、仕組みをきちんと理解しそれらを自分に合わせて使えるようにした方がいいと思いませんか?エージェンシーがあなたの大切な翻訳をどのように扱っているか、きちんと知りたいと思いませんか?CATの潜在的なメリットを有効活用してください。